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新・バーンスタイン音楽の旅 新・バーンスタイン音楽の旅

PMFの創設と同じく1990年からクラシック音楽に関する執筆を始め、
音楽評論家・著述家として活躍中の山田治生さん。
「音楽の旅」はレナード・バーンスタインの大ファンが“伝道師”として
彼の人生と音楽を紹介する PMF MUSIC PARTNER(メールマガジン)の連載企画です。

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音源は無料試聴サービス(各トラック冒頭30秒・連続最大15分まで)です。
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Journey 6

バーンスタインの
シューマン

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バーンスタインのシューマン

vol. 117(2025年2月)

新・バーンスタイン音楽の旅

音楽評論家の山田治生さんによる「音楽の旅」は6回目です。 現在、大雪に見舞われている白い札幌。1990年の今頃、6月26日の開幕に向けてバーンスタインは何を想い、何をしていたのでしょうか。 第1回のPMF1990では、約900人から選抜された世界18ヵ国・地域出身の若手音楽家123人で初のPMFオーケストラが結成されました。「太平洋作曲家会議」やロンドン交響楽団との合同演奏による「横浜アリーナ特別公演」なども開催された記念すべきPMFの幕開けです。
初代芸術監督としてバーンスタインがアカデミー生たちを自ら指導した曲はシューマン。PMFオーケストラの歴史はシューマンから始まりました。

Journey 6
バーンスタインの
シューマン

My favorite心に響き、残る、本命の1曲

シューマン交響曲 第2番 ハ長調 作品61

シューマン
交響曲 第2番 ハ長調 作品61

レナード・バーンスタイン(指揮)
ニューヨーク・スタジアム交響楽団

楽曲分析

レナード・バーンスタイン(ナレーション)

最晩年のバーンスタインが、1990年のPMFでシューマンの交響曲第2番を取り上げたように、バーンスタインにとってシューマンは特別な作曲家であった。1943年の代役でのセンセーショナルなニューヨーク・フィル・デビューでシューマンの「マンフレッド」序曲を振ったのは、もともとワルターが振る予定だったプログラムに入っていたからではあるが、早くも1953年には、ニューヨーク・スタジアム交響楽団を指揮して、シューマンの交響曲第2番を録音している。その後、1960年にニューヨーク・フィルとシューマンの交響曲全集を録音。そして、1984年から1985年にかけて、ウィーン・フィルとも交響曲全集を録音した。

1953年にニューヨーク・スタジアム響と録音したシューマンの交響曲第2番については、その音源を使って、自らナレーションを務めた「楽曲分析」の録音も聴くことができる。ここで説明されているのは、シューマンの管弦楽法の素晴らしさ、ユニークさ。今でこそ、クラシック音楽の作品はオリジナルな楽譜が重んじられているが、20世紀の前半は、指揮者が勝手にオーケストレーションを変えてしまうことは日常的で、「オーケストレーションに難がある」と決めつけられていたシューマンの交響曲などは、マーラーが全曲を編曲し直したりもしていた。だからこそ、バーンスタインは敢えてシューマンのオーケストレーションの魅力について語ろうとしたのだろう。

例えば、第1楽章冒頭の金管楽器の使い方について「素晴らしい抒情性や静かな神秘性を獲得していて、単なるトランペットの音ではなく、あたかも宇宙の果てから来たような音」と述べる。そしてシューマンのオーケストレーションについて、「古典的な観点からすると、こんなに教科書通りではないオーケストラの扱いは見当たりません」という。

そして最大の聴きどころとして、第3楽章の48小節目(全曲盤の4分18秒あたり)からを解説する。

「そして間違いなく最も恍惚とするような音楽のクライマックスの一つが訪れます。メロディがこれ以上届かない高さまで舞い上がり、それがトリルとなって長く下降していきます。この偉大なクライマックスが、弦、ホルン、クラリネット、ファゴットという、とても控え目な楽器編成によって達成されていることに注目してください。それらだけなのです。そのシンプルなオーケストレーションは奇跡的です。そして、この地上から舞い上がっているようなトリルの下では、木管のソロが地上に戻り、悲しげに、まるで偉大なプリマ・ドンナのたいへんなカデンツァのように歌います。それは自由で瞑想的で純粋な歌です。なんと美しく、なんとシンプル。それなのになんと独創的で感動的なオーケストレーションなのでしょう」

35歳のバーンスタインは、このニューヨーク・スタジアム響との録音で、じっくりと第3楽章を歌い上げている(11分53秒ほどかかっている。それでも、32年後に録音したウィーン・フィルとの演奏よりは2分ほど速いのではあるが)。

Variationsおすすめ4選を解説!SNS投稿で
百戦錬磨の匠が奏でる“140字の芸術”

交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」

シューマン
交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」

レナード・バーンスタイン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

第1楽章序奏でのゆったりとしたテンポのスケールの大きな音楽と主部での快速テンポの躍動的な音楽とのコントラストの妙。ウィーン・フィルらしい自発的な演奏が素晴らしい。ウィーン・フィルのフルート、オーボエ、ウィンナ・ホルンをはじめとする金管楽器の素朴な音色に、作品にふさわしい野趣を感じる。

PMFプログラム
交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」

シューマン
交響曲 第3番 変ホ長調
作品97「ライン」

レナード・バーンスタイン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

交響曲第3番「ライン」は、シューマンが、デュッセルドルフ市の音楽監督に就任し、ケルンの大聖堂やライン河畔での生活からインスピレーションを得たといわれる作品。バーンスタインらしい躍動的で熱い演奏。金管楽器の開放的な鳴らし方が気持ち良い。ウィーン・フィルの一体感が素晴らしい。

交響曲 第4番 ニ短調 作品120

シューマン
交響曲 第4番 ニ短調 作品120

レナード・バーンスタイン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

シューマンにとって2番目に書かれた交響曲であるが、初演が芳しくなく、10年後に改訂し、それを出版したために、「第4番」となった。バーンスタイン&ウィーン・フィルはスケールが大きく、力感あふれる演奏。と同時に微妙なテンポの変化が素晴らしい。第4楽章コーダのスピード感には圧倒される。

PMFプログラム
チェロ協奏曲 イ短調 作品129

シューマン
チェロ協奏曲 イ短調 作品129

レナード・バーンスタイン(指揮)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

1976年録音。当時、世界最高のチェリストであった、ロストロポーヴィチとのチェロ協奏曲。ロストロポーヴィチが雄弁で風格のある演奏を繰り広げ、バーンスタインが情熱的にサポートしている。バーンスタインはロストロポーヴィチと親交があり、彼のために政治的序曲「スラヴァ!」を作曲している。

Journey 5

PMF2024
鑑賞レポート

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バーンスタインのシューマン

vol. 114(2024年11月)

新・バーンスタイン音楽の旅

PMF MUSIC PARTNER(メールマガジン)は、今月で創刊10年を迎えました。都合により、配信が不定期となる場合がありますが、これからもクラシック音楽の話題とPMFの最新情報をお届けしてまいります。読者の皆様、引き続き「ミュージック・パートナー」をよろしくお願いいたします。
さて、今回の「音楽の旅」は、クラシック音楽に関する評論・執筆活動が“生業”の山田治生さんによるPMF2024鑑賞レポートです。第一線で活躍する音楽評論家の耳と心に、PMFオーケストラの演奏はどう響いたのでしょうか。後半ではPMF2025で予定しているプログラム(一部)をご紹介します。

Journey 5
PMF2024
鑑賞レポート

My favorite今夏のハーモニー・オブ・ピース

シューマン交響曲 第2番 ハ長調 作品61

マンフレート・ホーネック(指揮)
エリアス・グランディ(指揮)
PMFオーケストラ

世界62ヵ国・地域から1,123人が応募したPMF2024アカデミー・オーディションの合格者85人(平均年齢23.8歳)で結成

※このCDは非売品です。

PMF2024の首席指揮者はマンフレート・ホーネック、客演指揮者はエリアス・グランディであった。会期の前半にはドイツ出身の若きマエストロ、グランディが登場。2025年4月に札幌交響楽団の首席指揮者に就任する彼は、2004年にチェリストとしてPMFオーケストラに参加し、2012年にはコンダクティング・アカデミー生として研鑽を積んだ、PMFのOBである。

7月14日のPMFオーケストラ演奏会では、R. シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)が演奏された。グランディは、「ドン・ファン」を速めのテンポで鮮やかに描く。オーケストラは一体感があり、アンサンブルが良い。速いパッセージも弦楽器が上滑りしないでしっかりと鳴っている。長大なソロを吹いたオーボエは、個性的な音で、上手い。プロコフィエフでは、クララ=ジュミ・カンが独奏を務めた。カンは、音に張りと艶があり、しっかりと芯のある音を奏でる。この日の彼女の演奏には、抒情性よりも、明快さや強靭さが感じられた。オーケストラは、合わせるのが決して容易ではない作品だが、健闘し、充実した共演となった。

「牧神の午後への前奏曲」では、グランディが細やかな指揮を披露。そして音楽が高揚するところでは腕を大きく広げた。弦楽器が美しく、フルートも良かった。最後の「火の鳥」では、ライナー・キュッヒル(コンサートマスター)、ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン)、アンドレアス・ブラウ(フルート)、ジョナサン・ケリー(オーボエ)、サラ・ウィリス(ホルン)ら教授陣も演奏に参加。キュッヒルのリードはさすがであり、ケリーも素晴らしい音色を聴かせてくれた。グランディは、情景が目に浮かぶような、ビジュアル的な音楽を作り上げた。

演奏の様子

会期の後半には、元ウィーン・フィルのヴィオラ奏者で、現在、ピッツバーグ交響楽団の音楽監督を務めるマンフレート・ホーネックが登場。7月30日のPMFオーケストラ東京公演では、モーツァルトのピアノ協奏曲第22番とマーラーの交響曲第5番が取り上げられた。モーツァルトの独奏はウィーン出身のティル・フェルナー。つまり、ウィーンと関わりの深い作曲家及び演奏家によるコンサートとなった。

モーツァルトでは、フェルナーは、優美で粒立ちのよいフォルテピアノのような音を奏でる。ハ短調の第2楽章での表現に深みを感じる。第3楽章は脱力した軽やかな演奏。オーケストラも、力むことなく、モーツァルトにふさわしい音。重要な木管楽器陣も上手い。

マーラーの交響曲第5番では、ホーネックがその箇所その箇所でのほしい音色(こだわり)を具現化。よほど厳格なリハーサルがなされたのであろう。弦楽器は、厚みも透明感もあり、多彩。金管楽器陣が見事。アンコールにR. シュトラウスの「ばらの騎士」からワルツが演奏された。

全体を通して、オーケストラの演奏は、コロナ禍前の高い水準に戻ったように感じられた。

演奏の様子

VariationsPMF2025のプログラムをご紹介

シベリウスヴァイオリン協奏曲 二短調 作品47

シベリウス
ヴァイオリン協奏曲 二短調 作品47

アンドレ・プレヴィン(指揮)
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
シュターツカペレ・ドレスデン

写真:山田 治生

フィンランドの作曲家、シベリウスのヴァイオリン協奏曲は、5大ヴァイオリン協奏曲の一つに数えられる名作。ムターの演奏はかなりユニークといえる。冒頭をほぼノン・ビブラートの澄んだ音で開始し、そのあとだんだんと色や艶を増していく。第2楽章では弱音表現が印象的。北欧的な清澄な響きとロマンティックな情感。

マーラー交響曲 第1番 ニ長調「巨人」

マーラー
交響曲 第1番 ニ長調「巨人」

レナード・バーンスタイン(指揮)
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

写真:山田 治生

マーラーの青春の歌というべき、交響曲第1番「巨人」。バーンスタインはマーラーの第1番を2度録音しているが、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との1987年の録音は2度目のもの。青春を懐かしむようなところもあるが、全体的には、生気に満ち、永遠の青年を思わせる颯爽とした若々しい演奏。

シューマン 交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」

シューマン
交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」

レナード・バーンスタイン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

バーンスタインは、第1回PMFでシューマンの交響曲第2番を指揮したように、シューマンに対して特別な思いを持っていた。この1984年のウィーン・フィルとの録音では、バーンスタインのシューマン愛とともにウィーン・フィルの味わい深い音色が満喫できる。マーラーの交響曲のようなスケールの大きな演奏。

R. シュトラウス 交響詩「死と変容」作品24

R. シュトラウス
交響詩「死と変容」作品24

アンドリス・ネルソンス(指揮)
ボストン交響楽団

写真:山田 治生

R. シュトラウスの「死と変容」は彼の初期の作品。楽曲では、死の床にいる病人が描かれる。そこでは生と死が壮絶な戦いを繰り広げ、結局、病人は、死を迎えるが、同時に変容(浄化)される。ネルソンスとボストン響の演奏は、オペラのようにドラマティックで、シュトラウスの豊潤な管弦楽法を見事に再現。

Journey 4

PMFオーケストラの
演奏曲目を予習

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バーンスタインのシューマン

vol. 110(2024年7月)

新・バーンスタイン音楽の旅

山田治生さんによる選曲とエッセイでめぐる「音楽の旅」は4回目。85人のPMF2024アカデミー生が札幌に到着し、いよいよ来週から“バーンスタインの音楽祭”が始まります。
今回はPMFオーケストラが演奏するプログラムから5曲をピックアップ。バーンスタインやカラヤンなどの名演で予習し、コンサートの生演奏を存分にお楽しみください!

Journey 4
PMFオーケストラの
演奏曲目を予習

My favorite心に響き、残る、本命の1曲

マーラー 交響曲 第5番 嬰ハ短調

マーラー
交響曲 第5番 嬰ハ短調

マンフレート・ホーネック(指揮)
ピッツバーグ交響楽団

写真:山田 治生

ホーネックは、2008年から、ピッツバーグ交響楽団(かつてプレヴィン、マゼール、マリス・ヤンソンスが音楽監督をつとめたアメリカの名門オーケストラ)の音楽監督をつとめ、数多くのディスクを残しているが、マーラーの交響曲第5番を2011年に録音している。ウィーン流の優美な「アダージェット」やアメリカのオーケストラならではのブラスの素晴らしさが際立つ名演。こちらも予習のために聴いてみるのは一興である。

バーンスタインは、1985年から、ウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ニューヨーク・フィルを指揮して、ドイツ・グラモフォンで彼にとって2度目のマーラーの交響曲全曲の録音を始めた。しかし、1990年10月にバーンスタインが急逝し、全集は第8番の録音を欠くこととなってしまった(後に、それ以前の第8番の録音を加えて、全集として発売されることになったが)。ウィーン・フィルとの交響曲第5番は、1987年9月、フランクフルトでのライブ録音である(演奏の詳細については、この連載の第2回で述べたので、ご参照ください)。

マンフレート・ホーネックは、ウィーン国立音楽大学で学び、1983年にヴィオラ奏者としてウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団し、その後、ウィーン・フィルのメンバーになった。周知のとおり、ウィーン・フィルのコンサートマスターであるライナー・ホーネックは、マンフレートの弟である。マンフレートは、1987年頃から、アバドの創設したグスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団でアバドのアシスタントをつとめたり、ウィーン・ジュネス・オーケストラを創設したり、指揮者としての活動を始めた。1989年には、カッセルでのマーラー音楽祭で交響曲第1番「巨人」(初演100周年)を指揮して大きな成功を収める。つまり、ホーネックは、指揮者としてのキャリアの最初からマーラーを得意としていた。

バーンスタインは、1980年代、ウィーン・フィルの常連で、マーラーの交響曲では、1987年9月の第5番のほかに、1984年2月に第4番も指揮している。マンフレート・ホーネックがウィーン・フィルのヴィオラ奏者としてバーンスタインと共演して、彼からどんな影響を受けたのか、機会があればきいてみたいものである。

Variations 140字の魔術師による解説で
予習はカンペキ!

バーンスタイン「キャンディード」序曲

バーンスタイン
「キャンディード」序曲

レナード・バーンスタイン(指揮)
ロンドン交響楽団

写真:山田 治生

「キャンディード」序曲は、バーンスタインの作品のなかで最も演奏頻度の高いコンサートピースに違いない。もともとのミュージカルは「ウエストサイド・ストーリー」ほどにはヒットしなかったが、バーンスタインが遺言のように死の前年に指揮した全曲録音がある。その全曲録音から序曲を聴いてみよう。

R. シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」作品20

R. シュトラウス
交響詩「ドン・ファン」作品20

ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

管弦楽法の達人、R. シュトラウスが23、24歳頃に書いた傑作。スペインの伝説の色男、ドン・ファンを描く。まさにシュトラウスの早熟の天才ぶりが示されている。バーンスタインの“ライバル”であったカラヤンが最晩年に残したベルリン・フィルとの豊潤かつドラマティックな名演を楽しむ。

プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品19

プロコフィエフ
ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品19

ミッコ・フランク(指揮)
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)
フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲は、1916年から17年にかけて作曲された。彼の25歳頃の作品。3つの楽章が緩急緩という構成がユニーク。ヴァイオリンが歌う抒情的な旋律の美しさやプロコフィエフ独特のモダニズムが魅力的である。現代最高のヴァイオリニストの一人である、ヒラリー・ハーンの名演を聴く。

モーツァルト ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K. 482

モーツァルト
ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K. 482

ユリ・シーガル(指揮)
ティル・フェルナー(ピアノ)
ローザンヌ室内管弦楽団

写真:山田 治生

モーツァルトのウィーン時代の、祝祭的で堂々とした佇まいのピアノ協奏曲。モーツァルトは、この作品において、ピアノ協奏曲で初めてクラリネットを使った。ウィーン出身のフェルナーはモーツァルトを得意としていて、今から約30年前にこの作品を録音している。ピアノとオーケストラとのやりとりに注目。

Journey 3

小澤征爾と
レナード・バーンスタイン

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バーンスタインのシューマン

vol. 107(2024年2月)

新・バーンスタイン音楽の旅

「音楽の旅」は、音楽評論家の山田治生さんによる「小気味よいエッセイ」と「選曲の妙」を楽しみながら、レナード・バーンスタインの人生と音楽を知る連載企画です。
2月9日の読響定期演奏会(後半の開始)で、指揮者の山田和樹氏の口から小澤征爾氏の訃報を聞いた山田さん。「小澤征爾氏が亡くなって、悲しいというよりも、心にポッカリと大きな穴が空いたような気持ち」と現在の心境を語っています。
クラシック音楽界は巨匠を、日本は世界のオザワを失いました。小澤氏の偉大な功績に心から敬意と感謝を申し上げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。きっと向こうでは、バーンスタインとも再会するのではないでしょうか。二人の魂と音楽は永遠です。

Journey 3
小澤征爾と
レナード・バーンスタイン

My favorite心に響き、残る、本命の1曲

武満 徹 ノヴェンバー・ステップス

武満 徹
ノヴェンバー・ステップス

小澤征爾(指揮)
鶴田錦史(琵琶) 横山勝也(尺八)
サイトウ・キネン・オーケストラ

写真:山田 治生

武満徹は、「ノヴェンバー・ステップス」でオーケストラと琵琶と尺八を共演させたが、安易に日本と西洋の音楽を融合させず、異なるものとして描き、音楽のダイバーシティ(多様性)を示した。これは世界初演者・小澤征爾が1989年にサイトウ・キネン・オーケストラと再録音したもの。

25歳の小澤征爾は、1961年4月、ニューヨーク・フィルの副指揮者に就任した。小澤にとって初めての“定職”であったが、ニューヨーク・フィルで音楽監督バーンスタインのアシスタントを務めるのがその仕事であった。そして、1961年4月のニューヨーク・フィルの日本ツアーに帯同。バーンスタインやニューヨーク・フィルの楽団員とともに羽田空港に降り立った。ニューヨークに戻った小澤は、ニューヨーク・フィルの3人の副指揮者の一人として、リハーサル、本番、レコーディングに立ち会った(そのなかにはバーンスタインとグールドとの共演もあった)。しかし、いくら名門ニューヨーク・フィルとはいえ、いつまでもアシスタントを務めているわけにはいかず、小澤は62年5月でニューヨーク・フィルを離れた。

その後、小澤は1965年にカナダのトロント交響楽団の音楽監督となった。北米の有力なオーケストラの一つである。その頃には、小澤は、新進気鋭のマエストロとして世界的に注目されていた。1966年にはベルリン・フィルの定期演奏会にデビューし、ザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルと初共演している。

1967年、バーンスタインが音楽監督を務めているニューヨーク・フィルが創立125周年を迎え、それを記念して武満徹に新作が委嘱され、「ノヴェンバー・ステップス」が作曲された。そして同年11月に、ニューヨークでの「ノヴェンバー・ステップス」の世界初演の指揮を担ったのは、もちろん、小澤であった。この成功により、武満=小澤のコンビは世界的にブレークすることになる。

小澤にとってバーンスタインは、最初はボス(上司)であったが、小澤が独り立ちしてからは、完全に同業の仲間と思っていたに違いない。いくつになっても小澤にとって、カラヤンは「カラヤン先生」であり、バーンスタインは「レニー」であった。小澤は、1970年にサンフランシスコ交響楽団の音楽監督に就任し、1973年にニューヨーク・フィルと並ぶアメリカの名門、ボストン交響楽団の音楽監督となった。短いサンフランシスコ響時代、小澤は、バーンスタインの「ウエストサイド・ストーリー」からシンフォニック・ダンスを録音している。若き小澤の明るくノリの良い演奏が聴ける。

その後、1984年に恩師・齋藤秀雄没後10周年を記念してひらかれた「齋藤秀雄メモリアル・コンサート」で臨時編成された「桐朋学園メモリアル・オーケストラ」をもとに、小澤が中心となって、サイトウ・キネン・オーケストラが結成された。そして、1992年には、松本で第1回となる「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」が開催された。パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)が創設されたのが1990年であることを考えると、1990年代初頭に、バーンスタインと小澤征爾が、現在の日本を代表する2つの音楽祭を生み出したといえる。なお、武満徹は1992年にサイトウ・キネン・フェスティバル松本のオープニングのために「セレモニアル」を作曲し、1994年にPMFのレジデント・コンポーザーを務めた。

Variations達人が140字で解説する
「世界のオザワ」名演5選

バーンスタイン「ウエストサイド・ストーリー」よりシンフォニック・ダンス

バーンスタイン
「ウエストサイド・ストーリー」より
シンフォニック・ダンス

小澤征爾(指揮)
サンフランシスコ交響楽団

写真:山田 治生

1972年、小澤征爾&サンフランシスコ響は、ドイツ・グラモフォンへのデビュー盤として、チャイコフスキー、プロコフィエフ、ベルリオーズの「ロメオとジュリエット」とともに、20世紀の「ロメオとジュリエット」である「ウエストサイド・ストーリー」のシンフォニック・ダンスを録音したのであった。

バーンスタイン セレナード

バーンスタイン
セレナード

小澤征爾(指揮)
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)
ボストン交響楽団

写真:山田 治生

ボストン響との唯一のバーンスタイン作品の録音はパールマンとの「セレナード」。名ヴァイオリニスト、パールマンは小澤の盟友の一人だった。このバーンスタインの協奏曲仕立ての名作で甘美な音色を披露。二人は、このほか、ヴィエニャフスキー、ベルク、ストラヴィンスキーの協奏曲も一緒に録音している。

シャブリエ 狂詩曲「スペイン」ほか

シャブリエ
狂詩曲「スペイン」ほか

小澤征爾(指揮)
ボストン交響楽団

写真:山田 治生

小澤とフランス音楽の相性の良さは天性のものといえるだろう。生き生きとしていて、色彩に満ちている。ここに収められているシャブリエ、グノー、トーマ、オッフェンバックらフランスの管弦楽曲には、そんな小澤の魅力が最良の形で表れている。小澤&ボストン響の膨大な録音のなかでもオススメの1枚。

チャイコフスキー 弦楽セレナード ハ長調 作品48/モーツァルト ディヴェルティメント ニ長調 K. 136

チャイコフスキー
弦楽セレナード ハ長調 作品48

モーツァルト
ディヴェルティメント ニ長調 K. 136

小澤征爾(指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ

写真:山田 治生

サイトウ・キネン・フェスティバル松本の初年度である1992年の録音。チャイコフスキーの「弦楽セレナード」とモーツァルトの「ディヴェルティメント」は、小澤征爾及びSKOのメンバーが齋藤秀雄から直接指導を受けたレパートリーである。名手揃いのSKOの弦楽器の魅力が満喫できる。

Journey 2

バーンスタインの
名演を味わう

記事を読む
バーンスタインのシューマン

vol. 104(2023年11月)

新・バーンスタイン音楽の旅

「音楽の旅」は、音楽評論家の山田治生さんによるエッセイと選曲で、レナード・バーンスタインの人生と音楽を知る連載企画です。
第2回は、PMF2024でオーケストラが演奏するプログラムを中心にご紹介します。
クラシック音楽は「同じ楽曲でも、同じ演奏がない」のが魅力のひとつ。指揮者やオーケストラ、ソリストなどによって作品の印象、感じ方は大きく変わります。芸術の秋、文章と録音でバーンスタインの名演を味わいましょう!

Journey 2
バーンスタインの
名演を味わう

My favorite心に響き、残る、本命の1曲

マーラー 交響曲 第5番

マーラー
交響曲 第5番

レナード・バーンスタイン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

数多いバーンスタインのマーラーのディスクのなかでも、私が特に好きなのはウィーン・フィルとライブ録音した交響曲第5番(1987年9月)である。とりわけ終楽章は本当に素晴らしいと思う。最後に金管楽器が勝利の歓喜を表すようなコラール(711小節目から、13分28秒あたりから)を吹奏するが、ここは、それに合わせてまさに一丸となって細かい音符を奏でている弦楽器群及び木管楽器群に注目したい。

多くの演奏では、弦楽器と木管楽器の細かい動きは金管楽器にかき消されてしまうが、ウィーン・フィルの弦楽器と木管楽器はそれが歌であるかのように一音一音(とても速いが)歌い込む。そしてペザンテに入る2小節前(729小節、13分48秒あたり)からのリタルダンド(テンポが少しずつ遅く変化する)では、本当に指揮者とオーケストラとが息を合わせて一体となっていることを感じる。バーンスタインとウィーン・フィルの20年以上の付き合いゆえの合一感といえるだろう。そして、ペザンテ(731小節目、13分50秒あたり)からの弦楽器群の音符の刻みの長さを変化させながらのアンサンブルの見事さ。まさにウィーン・フィルの底力に圧倒される。

マーラーの交響曲第5番では、ハープと弦楽器群によって演奏される第4楽章「アダージェット」がヴィスコンティ監督の映画「ヴェニスに死す」(1971年公開)で使われたこともあり、よく知られているが、バーンスタインの指揮する「アダージェット」といえば、1968年6月、ロバート・ケネディ(ジョン・ケネディ大統領の実弟)が暗殺され、ニューヨークの聖パトリック大聖堂で行われた彼の葬儀での演奏が思い出される(録音も残っている)。また、1987年11月、エイズ撲滅運動に協賛してニューヨークのカーネギーホールで開催されたチャリティ・コンサート「ミュージック・フォー・ライフ」でもバーンスタインはマーラーの「アダージェット」を取り上げた(これもかつてCD化された)。エイズの犠牲者を追悼する意味があったに違いない。ともに祈りのような演奏である。

マーラーは、交響曲第5番を創作している期間にアルマと出会い、結婚した。マーラーと親交のあった指揮者のウィレム・メンゲルベルクは「このアダージェットは、グスタフ・マーラーの、アルマへの愛の表明であった!マーラーはアルマに手紙の代わりにその楽譜を送った」と書いている。その真偽は定かではないが、私も、「アダージェット」でマーラーはアルマへの愛を描いていたように思う。

「アダージェット」に、愛を感じても、祈りを感じても、あるいは「ヴェニスに死す」のような頽廃を感じても良い。実際の演奏会では、先入観にとらわれずにこの美しい「アダージェット」を聴くことをオススメします。

Variations “140字の達人”の選曲&解説で広がる
「音楽の旅」

マーラー 交響曲 第2番「復活」

マーラー
交響曲 第2番「復活」

レナード・バーンスタイン(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

ニューヨーク・フィルとの再録音にあたる1987年のマーラーの交響曲第2番「復活」は、バーンスタインの晩年を代表する名演の一つ。とりわけ終楽章の終結部は、聴いているだけで、大コーラスと大管弦楽を相手にしたバーンスタインのカリスマ性(ヒューマン・パワー)が目に見えるように感じられる。

マーラー 交響曲 第3番

マーラー
交響曲 第3番

レナード・バーンスタイン(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

バーンスタインのマーラー演奏で一つあげるとすれば、このニューヨーク・フィルとの交響曲第3番の再録音をあげたい。旧盤でもかなり素晴らしい演奏であったが、この1987年のライブ録音の、特に終楽章を聴くと、まったく不可能なのに「ああ、その場所に居たかった!!」という感情が沸き起こってくる。

ストラヴィンスキー バレエ音楽「火の鳥」組曲(1919年版)

ストラヴィンスキー
バレエ音楽「火の鳥」組曲(1919年版)

レナード・バーンスタイン(指揮)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

バーンスタインは「ヤング・ピープルズ・コンサート」の中で「火の鳥」について、「『子守歌』が『終曲』に移るシーンの変化は、すべての音楽の中で最も魔法のような瞬間の一つです。ホルンがロシア民謡を奏でると空気が一変し、我々を現実の結婚式へと引き戻します。奇跡的な瞬間です」と述べていた。

ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」

ストラヴィンスキー
バレエ音楽「春の祭典」

レナード・バーンスタイン(指揮)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

イスラエル・フィルとの「春の祭典」は、ストラヴィンスキーの生誕100周年を記念して1982年に録音された。大地の春の息吹、自然の生命力。そしてバーンスタインの抜群のリズム感(ときにはジャズっぽいノリも)。近年は解像度の良い演奏が好まれるが、この生命感あふれる「春の祭典」の魅力は不滅である。

Journey 1

音楽で
自分を語り尽くす

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バーンスタインのシューマン

vol. 97(2023年2月)

新・バーンスタイン音楽の旅

月に一度のペースでPMFの最新情報と音楽の話題をお届けするミュージック・パートナー。今回から新しい連載が加わります。
PMFの創設と同じく1990年からクラシック音楽に関する執筆を始め、現在は音楽評論家として「音楽の友」などの専門誌や新聞各紙でも活躍中の山田治生さん。“新・音楽の旅”は、バーンスタインの大ファンによる「小気味よいエッセイ」と「選曲の妙」で彼の人生と音楽を知り、深めていくオリジナル企画です。
読者の皆様は、ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)の音源を期間限定で無料試聴できます。それでは「文章と音」でバーンスタインの作品をご堪能ください!

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語り尽くす

My favorite心に響き、残る、本命の1曲

バーンスタイン:交響曲 第3番「カディッシュ」

バーンスタイン
交響曲 第3番「カディッシュ」

レナード・バーンスタイン(指揮)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

バーンスタインは、指揮活動の合間に作曲を行っていたような印象を受けるが、彼が亡くなって30年以上が経ち、改めて彼の作品を概観すると、バーンスタインは、一つ一つの作品に自分の描きたいことを述べ、トータルで自分を語り尽くしていたように思われる。

交響曲第1番「エレミア」(1942年完成)では、敬虔なユダヤ教徒であった父親(ウクライナ出身のユダヤ人)から強い影響を受けた彼が、自らの出自を描いている。つまり、ユダヤ人がどうして祖国を失い、放浪の民となったか、その原点ともいえる「バビロン捕囚」前後の出来事を題材として交響曲を書いたのであった。

交響曲第2番「不安の時代」(1949年初演)は、ニューヨークのバーで三人の男性と一人の女性が会話をかわす、W. H. オーデンの同名の詩にインスピレーションを受けて書かれた。ここでは神を信じられなくなった現代人の不幸と信仰の回復が描かれる。

第3番「カディッシュ」(1963年初演)では、ユダヤ教徒である彼の神に対する愛憎入り混じった複雑な感情が吐露されている。バーンスタインは、戦争や自然災害など人間の困難な現状に対して何も応えてくれない神に対して、懐疑を抱き、怒りに近い気持ちをぶつける。しかし、最終的には、神と和解し、ともにあることを呼びかける。語り、ソプラノ独唱、合唱を伴う大規模な交響曲である。

「カディッシュ」とは、死者に捧げるユダヤ教の祈りの言葉。「聖化」を意味する。合唱や独唱者に歌われる歌詞は、「カディッシュ」の祈りから採られ、ヘブライ語、アラム語で書かれているが、語りのテキストは、バーンスタイン自身によって英語で書かれ、彼の思想がストレートに表明されている。この交響曲には、3つのカディッシュが含まれ、第1楽章の不安定なカディッシュが、第2楽章のソプラノが歌う子守歌のようなカディッシュを経て、第3楽章の児童合唱が歌う喜ばしいカディッシュへと至る。原爆投下40周年の1985年8月6日、バーンスタインは、ECユース・オーケストラとともに広島を訪れ、自らこの交響曲を指揮したのであった。

バーンスタインは、1976年にドイツ・グラモフォンと契約を結ぶと、まず、イスラエル・フィルと自作の交響曲の録音を希望し、1977年に彼らと全交響曲を録音した。

バーンスタインは、ユダヤ人として第1番を、現代人として第2番を、人間として第3番を書いたといえるかもしれない。そしてそれらを発展させたのが、シアターピース「ミサ」(1971年初演)である。彼は、既成の宗教的な権威へ異議を申し立て、民衆一人ひとりによる、新たな信仰の構築を目指す。また、第4次中東戦争で死んだイスラエルの若いフルート奏者に捧げた「ハリル」(1981年初演)では、バーンスタインの反戦思想や平和への希求が示されている。

バーンスタインのシリアスな作品には彼のその時々の問題意識が表れていて、それらを聴けば、バーンスタインがどういう思想の持ち主であったか、よくわかる。

Variations選曲の妙!音楽の旅が広がる4曲

バーンスタイン:交響曲 第1番「エレミア」

バーンスタイン
交響曲 第1番「エレミア」

レナード・バーンスタイン(指揮)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

バーンスタインが指揮者として本格的にデビューする前の、1942年に完成された。民衆が古代ユダヤの預言者エレミアの預言をきかず冒涜し、エルサレムが陥落し、民衆はバビロンへと移住させられるというストーリーが描かれる。第3楽章ではメゾソプラノが、陥落したエルサレムと民衆の嘆きを歌う。

バーンスタイン:交響曲 第2番「不安の時代」

バーンスタイン
交響曲 第2番「不安の時代」

レナード・バーンスタイン(指揮)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

ピアノ独奏を伴う交響曲。ジャズ的な要素が採り入れられ、ジャズ・ピアニストがソロを弾くこともある。ここでは、バーンスタインの盟友であった作曲家兼指揮者兼ピアニストのルーカス・フォスの才気あふれる独奏を楽しむ。インスピレーションを受けたオーデンの同名の詩は1948年にピュリッツァー賞を受賞。

バーンスタイン:ミサ

バーンスタイン
ミサ

マリン・オルソップ(指揮)
ボルティモア交響楽団

写真:山田 治生

クラシカルな宗教音楽のほか、ロック、ブルース、フォークソングを交え、現代音楽をも含む壮大な作品。バーンスタイン自身が書き加えた英語のテキストではベトナム戦争や同性愛などにも言及。ここでは、バーンスタインの愛弟子であり、1990年と2019年のPMFに参加した、マリン・オルソップの録音を紹介。

バーンスタイン:ハリル

バーンスタイン
ハリル

レナード・バーンスタイン(指揮)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

写真:山田 治生

「ハリル」はヘブライ語でフルートを意味する。「ノクターン」と記された夜の音楽。前半は、亡くなった若き奏者のフルートが歌い、快活に振る舞う。しかし、終盤、フルートのソロは途切れ、オーケストラの激しい音楽となる。オーケストラの中のアルト・フルートとピッコロが彼の死と昇天を際立たせる。

山田 治生

山田 治生

京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。バーンスタインの生演奏が聴きたくて単身ニューヨークに。PMFの創設と同じく1990年からクラシック音楽に関する執筆活動を開始。著書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」や小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 / ツイッター演奏会日記」(以上アルファベータ)、「バロック・オペラ」(新国立劇場情報センター)ほか。バレエやミュージカルなどの舞台にも精通。趣味はヴィオラ演奏(最近、弾いていません。)、朝の連続ドラマ鑑賞、SNS投稿。

ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)

ナクソス・ミュージック・ライブラリー
(NML)

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