パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)は、1990年、『ウエストサイド・ストーリー』の作曲者として知られる世界的な音楽家、レナード・バーンスタイン(1918~90)が、ロンドン交響楽団とともに札幌で創設した国際教育音楽祭です。
2019年に創設30周年を迎えたのを機に、これまで果たしてきた役割と成果を改めて確認するとともに今後の方針と将来像を描くため、PMF将来ビジョン検討委員会(外部委員会)を設置。約1年6カ月にわたる検討を経て、2020年9月に「PMF将来ビジョン2020 -平和をつなぎ 人をつなぎ 音楽をつなぐ-」がまとめられました。
PMF組織委員会は、このビジョンを踏まえて、今後10年間の行動計画となるアクションプランを策定。この計画に基づいて様々な取り組みを展開し、PMF将来ビジョンの実現を目指していきます。
私は今、再び選択に迫られています。
音楽のために、そして音楽を通じて人々のために何をなすのがベストであるか。
神から与えられた残りの時間を、一番最初に愛したピアノに立ち返り、ベートーヴェンのソナタ全曲を演奏すべきものなのか。
あるいは指揮者としての活動に専念し、ブラームスの交響曲全曲を演奏し続けるべきか。
それとも作曲家としての活動に専念し、様々な曲を作るべきなのか。
71歳にもなれば、そのような問題について、考えるものです。
そして、それほど迷うこと無く、このような結論に達したのです。
残ったエネルギーと神が与えたもうた時間を教育に捧げ、私が知っていることすべて、分かち合えるものは何でも、多くの若い世代、そのなかでも特に若い人たちと分かち合うべきだと。
音楽についてだけではなく、芸術についても、そして芸術についてだけではなく、芸術と人生の関係についても。
更に、自分らしくあることについて、真の自分を知ること、「自分が何であるのかを知ること」、そして最善を尽くすことについても。
このようなことについて、できるだけ多くの人々に伝えることが出来るなら、私はとても幸せです。
そして、パシフィック・ミュージック・フェスティバルこそ、私の残された人生を捧げるべき献身と情熱の対象なのです。
PMFに関わる全ての人たち(PMFコミュニティ)の願いは、アカデミー生として参加した若手音楽家が、単に演奏技術の向上にとどまらず、音楽について深い洞察を持ち、人類愛に根差した音楽家としての姿勢を確立して、世界で活躍する姿を見ること。
世界の才能ある若手音楽家に最高水準のオーケストラスタディの機会を提供し、次世代を担う真のプロフェッショナル音楽家を輩出します。このことを通じて、世界の音楽芸術に貢献します。
札幌市民、北海道民のみならず、国内外の皆様に最高のクラシック音楽を届けます。そのうえで、多様な人々が集い、喜びを分かち合う場を創出し、祝祭をより華やかで楽しいものにします。
幅広い人々、特に子どもたちに音楽の楽しさに触れる機会を提供し、街を音楽で満たします。そして、市民が誇りに思える成果を生み出し続け、豊かな市民生活の醸成につなげます。
PMFは、世界の才能ある若者に世界最高水準の音楽教育を提供しています。1990年に創設されてから、30年間に77ヵ国・地域から延べ3,607名の若手音楽家を輩出し、未来のクラシックシーンを担う人材の育成に貢献してきました。修了生は、今や世界各地のオーケストラに在籍しているほか、指揮者やソリスト、教育者など、様々な立場から世界の音楽界で活躍しています。
PMFの最大の特徴は、参加する若者の国際性と多様性が際立っていることです。国籍・人種・文化・言語の異なる若者が札幌に集い、ひと夏限りのオーケストラを結成。切磋琢磨しながら音楽を創造しますが、その過程で互いの違いを理解し合い、交流を深め、達成感を共有します。これが音楽教育だけではない《平和を希求するPMF》の特徴ともなっています。毎年世界中で400近いクラシック音楽祭が開催されていますが、アカデミー生と教授陣を主体として、オーケストラスタディを主軸にしたプログラムを行っているのはPMFだけで、教育重視もPMFの特徴となっています。
一方で、教育の成果を披露する演奏会は、ホールコンサートのほかに、市民や観光客が行き交う場所で無料公演を多数行っているほか、特別支援学校や病院に出向くボランティアコンサート、小学生との共演、地元の音楽専攻生への指導など多彩なプログラムを展開し、音楽の楽しさに触れる機会を多くの方々に提供してきています。
30年に及ぶこれらの活動を通じて、PMFは札幌の音楽文化に大きな役割を果たし、引いては札幌の文化水準と都市の魅力を高めたという意見もあります。札幌と世界を結ぶ事業として高い評価が得られています。
【教授陣による評価】(2019年インタビュー調査)
【修了生による評価】(2019年インターネットによるアンケート調査、PMF2019参加修了生インタビュー)
PMFは、世界の才能ある若者に均しくチャンスを提供するため、受験の地理的制約をなくすネットオーディションの採用、経済的事情から解放する参加費の無償化を行っています。これによりアカデミー生は、世界各地から集まり、国際性と多様性の際立った構成が実現しています。また、ヨーロッパとアメリカの両方から世界最高峰の教授陣を招聘することで、異なる演奏法・音の概念を幅広く学べることもPMFの大きな特徴です。
今後もこれらの特徴をいかしながら、教育プログラム指針を策定するなど必要な改善を加えて、世界最高水準の音楽教育を進めていきます。
教育とともにPMFの重要な顔はフェスティバルとしての華やかさです。コンサートホールでの演奏会をはじめ、野外コンサートや街なかでのアウトリーチコンサートなど、期間中ほぼ毎日いろいろな場所でPMFの音色が響きます。若者たちが奏でる瑞々しい旋律、教授陣が織りなす最高水準のハーモニー、そして、ひと夏限りのオーケストラができあがる過程を楽しめることがPMFの醍醐味です。
今後も、バーンスタインの創設理念を踏まえつつ、フェスティバルとしての華やかさの創出、市民の参加機会の拡充に努め、一人でも多くの方々に楽しんでいただける音楽祭となるよう取り組んでいきます。また、PMFの文化的・国際的なポテンシャルをいかし、国内外からの誘客の拡大を目指します。
PMFのもう一つの役割は、クラシック音楽の魅力を広く多くの人々につなげる普及活動です。小学校6年生を対象としたリンクアップ・コンサートは、子どもたちがオーケストラと共演できる貴重な場であり、音楽の楽しさを実感できるプログラムとなっています。また、特別支援学校や病院でのボランティアコンサートは、演奏会場に行くことが困難な方々に音楽を届ける出張公演です。これらの取り組みは、プロの音楽家を目指すアカデミー生にとっても貴重な学びの場となっています。
今後も、これらの活動に加えて、子どもや若者世代が楽しめる企画や、ICTを使って新しい音楽の楽しみ方を提供するなど、音楽のあふれるまちを目指して取り組んでいきます。
※ PMF Connectsロゴは、修了生のユーリ・パポヴィッチさんがデザインしました。コロナ禍において実際の握手は避けるべき時期に、音楽が私たちをつないでくれるという想いが込められています。
PMFを持続的に開催し、ビジョンの実現に向けた取り組みを進めていくためには、事業の運営基盤を安定させることが不可欠です。組織、財政、情報発信などの面で必要な改革を行うとともに、新型コロナウイルス感染症に象徴される突発的な事態、社会経済の変化に対応できる持続可能な運営基盤を構築します。
※ 2015年9月の国連持続可能な開発サミットで採択された、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
これらの取り組みを踏まえて、音楽芸術を愛し、パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)の理念に共感する、PMFに関わる全ての人たち(PMFコミュニティ)と次の3つのビジョンを共有します。
PMFコミュニティ、札幌市民の積極的な参加と温かなまなざしで若手音楽家の成長を見守ることを通じて、私たちは他に代えがたい感動と達成感を享受することができます。この感動を多くの人たちと共に味わうことが出来ることを私たちは誇りに思い、広く世界に伝えていきます。
PMF30年の歴史を通して輩出され世界の音楽シーンで活躍を続ける優れた音楽家の存在は、世界のクラシック音楽界にとってかけがえのない共有の財産であり、PMFコミュニティは世界にその重要性を訴え続けていきます。ホストシティとしての札幌はこの財産を大切に育み、さらに積み重ねていく中でこの財産からもたらされる果実を効果的に活用することで、永続的な開催の基盤を確固たるものとします。
もはや30年の歴史を刻んできたことにより、私たちには継続への責任があることを認識し、バーンスタインが1990年6月26日に宣言したように、私たちも世界に向けてこの責任を全うすることを宣言します。
このビジョンの実現を目指して
努力を積み重ねることを通じて
「PMFは世界の憧れ」を実現し、音楽芸術の世界的拠点としての位置を確立し、
都市ブランド“札幌”を世界へ発信していきます
「PMFは世界の憧れ」を実現し、
音楽芸術の世界的拠点としての
位置を確立し、都市ブランド“札幌”を
世界へ発信していきます
このページは、「PMF将来ビジョン2020」と「アクションプラン」の概要を一体的にまとめたものです。
PMF事業について詳しくは、各ページをご覧ください。
本ページの内容のPDF版はこちらからダウンロードできます。
公益財団法人パシフィック・ミュージック・フェスティバル組織委員会
2021年3月編集
〒060-0052 札幌市中央区南2条東1丁目1-14 住友生命札幌中央ビル1階
電話:011-242-2211(営業時間 平日10:00~17:00)
お問い合わせフォーム >
PMFがこれまでに果たしてきた役割、教育音楽祭としての成果を把握するため、全修了生を対象にウェブ・アンケート調査を実施しました。調査は2019年10月11日~11月7日の期間、ウェブサイト上のアンケートフォームに回答を入力する形で行い、1990年~2018年のPMF修了生1,715人に協力を依頼。407件の回答を得ました(回収率23.7%)。
アンケート調査結果はこちらからダウンロードできます。