準・メルクルは、これまでドイツ作品の中核をなすレパートリーにおいて、管弦楽作品、オペラ両方の分野で確固たる評価を得ており、近年はフランス印象派作品の精緻かつ独自性を追求した解釈においても評価が高まっている。
ミュンヘン生まれ。ハノーファー音楽大学でヴァイオリン、ピアノ、指揮を学んだ後、セルジュ・チェリビダッケ、グスタフ・マイヤーに学ぶ。1986年にドイツ音楽評議会の指揮者コンクールで優勝。その1年後には、ボストン交響楽団の奨学金を得てタングルウッド音楽祭に参加し、レナード・バーンスタイン、小澤征爾に学んだ。ヨーロッパの歌劇場での出演を重ね、ザールラント州立劇場(91-94)、マンハイム国立劇場(94-2000)の音楽監督をつとめた。93年に「トスカ」でウィーン国立歌劇場にデビュー。96年には「神々の黄昏」でロイヤル・オペラ・ハウスに、99年には「イル・トロヴァトーレ」でメトロポリタン歌劇場にデビューするなど、次々とオペラ指揮者としてのキャリアを築いてきた。ウィーン、ベルリン、ミュンヘン、そしてドレスデンの国立歌劇場との長年の関係に加え、管弦楽作品の指揮者としても、クリーヴランド管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団など世界的なオーケストラと共演している。リヨン管弦楽団の音楽監督(05-11)、ライプツィヒMDR交響楽団の首席指揮者(-12)を歴任し、14-15年、15-16年シーズンはバスク国立管弦楽団の首席指揮者をつとめるなど、華やかなキャリアを築いている。
日本には、97年にNHK交響楽団を指揮してデビューし、その後も出演を重ねているほか水戸室内管弦楽団とも共演。2001年から4年がかりで上演された新国立劇場でのワーグナー「ニーベルングの指環」チクルス、07年のドレスデン国立歌劇場来日公演「タンホイザー」を指揮するなどめざましい活躍を続けるかたわら、国立音楽大学の招聘教授に就任し、後進の指導にもあたる。15年1月には読売日本交響楽団を初めて指揮、大阪フィルハーモニー交響楽団への客演など、近年はさらに活動の幅を拡げている。
レコーディングも活発に行ない、14年は、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団と、細川俊夫のアルバムを2タイトルリリース。リヨン管弦楽団とは、R. シュトラウス、マーラー作品(Altus)、ドビュッシー、ラヴェル、メシアン作品(Naxos)をリリースしている。12年、リヨン管弦楽団との功績を称えられ、フランス芸術文化勲章・シュヴァリエを受章。
PMFには、05年、08年に客演指揮者として参加し、13年、15年に首席指揮者として登場。今回で5回目の参加となる。