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PMF Founded by Leonard Bernstein PMF MUSIC PARTNER
2023年2月 - vol. 97
 
新・バーンスタイン音楽の旅

月に一度のペースでPMFの最新情報と音楽の話題をお届けするミュージック・パートナー。今回から新しい連載が加わります。
PMFの創設と同じく1990年からクラシック音楽に関する執筆を始め、現在は音楽評論家として「音楽の友」などの専門誌や新聞各紙でも活躍中の山田治生さん。“新・音楽の旅”は、バーンスタインの大ファンによる「小気味よいエッセイ」と「選曲の妙」で彼の人生と音楽を知り、深めていくオリジナル企画です。
読者の皆様は、ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)の音源を期間限定で無料試聴できます。それでは「文章と音」でバーンスタインの作品をご堪能ください!

重要

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Journey 1 音楽で自分を語り尽くす

A favorite 心に響き、残る、本命の1曲

バーンスタイン:交響曲 第3番「カディッシュ」/レナード・バーンスタイン指揮、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団/再生する 4月30日まで

バーンスタインは、指揮活動の合間に作曲を行っていたような印象を受けるが、彼が亡くなって30年以上が経ち、改めて彼の作品を概観すると、バーンスタインは、一つ一つの作品に自分の描きたいことを述べ、トータルで自分を語り尽くしていたように思われる。

交響曲第1番「エレミア」(1942年完成)では、敬虔なユダヤ教徒であった父親(ウクライナ出身のユダヤ人)から強い影響を受けた彼が、自らの出自を描いている。つまり、ユダヤ人がどうして祖国を失い、放浪の民となったか、その原点ともいえる「バビロン捕囚」前後の出来事を題材として交響曲を書いたのであった。

交響曲第2番「不安の時代」(1949年初演)は、ニューヨークのバーで三人の男性と一人の女性が会話をかわす、W. H. オーデンの同名の詩にインスピレーションを受けて書かれた。ここでは神を信じられなくなった現代人の不幸と信仰の回復が描かれる。

第3番「カディッシュ」(1963年初演)では、ユダヤ教徒である彼の神に対する愛憎入り混じった複雑な感情が吐露されている。バーンスタインは、戦争や自然災害など人間の困難な現状に対して何も応えてくれない神に対して、懐疑を抱き、怒りに近い気持ちをぶつける。しかし、最終的には、神と和解し、ともにあることを呼びかける。語り、ソプラノ独唱、合唱を伴う大規模な交響曲である。

「カディッシュ」とは、死者に捧げるユダヤ教の祈りの言葉。「聖化」を意味する。合唱や独唱者に歌われる歌詞は、「カディッシュ」の祈りから採られ、ヘブライ語、アラム語で書かれているが、語りのテキストは、バーンスタイン自身によって英語で書かれ、彼の思想がストレートに表明されている。この交響曲には、3つのカディッシュが含まれ、第1楽章の不安定なカディッシュが、第2楽章のソプラノが歌う子守歌のようなカディッシュを経て、第3楽章の児童合唱が歌う喜ばしいカディッシュへと至る。原爆投下40周年の1985年8月6日、バーンスタインは、ECユース・オーケストラとともに広島を訪れ、自らこの交響曲を指揮したのであった。

バーンスタインは、1976年にドイツ・グラモフォンと契約を結ぶと、まず、イスラエル・フィルと自作の交響曲の録音を希望し、1977年に彼らと全交響曲を録音した。

バーンスタインは、ユダヤ人として第1番を、現代人として第2番を、人間として第3番を書いたといえるかもしれない。そしてそれらを発展させたのが、シアターピース「ミサ」(1971年初演)である。彼は、既成の宗教的な権威へ異議を申し立て、民衆一人ひとりによる、新たな信仰の構築を目指す。また、第4次中東戦争で死んだイスラエルの若いフルート奏者に捧げた「ハリル」(1981年初演)では、バーンスタインの反戦思想や平和への希求が示されている。

バーンスタインのシリアスな作品には彼のその時々の問題意識が表れていて、それらを聴けば、バーンスタインがどういう思想の持ち主であったか、よくわかる。

Variations 選曲の妙!音楽の旅が広がる4曲

バーンスタイン:交響曲 第1番「エレミア」/レナード・バーンスタイン指揮、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団/再生する(4月30日まで)
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団/バーンスタインが指揮者として本格的にデビューする前の、1942年に完成された。民衆が古代ユダヤの預言者エレミアの預言をきかず冒涜し、エルサレムが陥落し、民衆はバビロンへと移住させられるというストーリーが描かれる。第3楽章ではメゾソプラノが、陥落したエルサレムと民衆の嘆きを歌う。
バーンスタイン:交響曲 第2番「不安の時代」/レナード・バーンスタイン指揮、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団/再生する(4月30日まで)
ピアノ独奏を伴う交響曲。ジャズ的な要素が採り入れられ、ジャズ・ピアニストがソロを弾くこともある。ここでは、バーンスタインの盟友であった作曲家兼指揮者兼ピアニストのルーカス・フォスの才気あふれる独奏を楽しむ。インスピレーションを受けたオーデンの同名の詩は1948年にピュリッツァー賞を受賞。
バーンスタイン:ミサ/マリン・オルソップ指揮、ボルティモア交響楽団/再生する(4月30日まで)
クラシカルな宗教音楽のほか、ロック、ブルース、フォークソングを交え、現代音楽をも含む壮大な作品。バーンスタイン自身が書き加えた英語のテキストではベトナム戦争や同性愛などにも言及。ここでは、バーンスタインの愛弟子であり、1989年と2019年のPMFに参加した、マリン・オルソップの録音を紹介。
バーンスタイン:ハリル/レナード・バーンスタイン指揮、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団/再生する(4月30日まで)
「ハリル」はヘブライ語でフルートを意味する。「ノクターン」と記された夜の音楽。前半は、亡くなった若き奏者のフルートが歌い、快活に振る舞う。しかし、終盤、フルートのソロは途切れ、オーケストラの激しい音楽となる。オーケストラの中のアルト・フルートとピッコロが彼の死と昇天を際立たせる。
山田 治生Haruo Yamada

Twitter:@yamadaharuo1964

ウェブサイト:音楽の友 web ONTOMO 音楽っていいなぁ、を毎日に。

京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。バーンスタインの生演奏が聴きたくて単身ニューヨークに。PMFの創設と同じく1990年からクラシック音楽に関する執筆活動を開始。著書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」や小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 / ツイッター演奏会日記」(以上アルファベータ)、「バロック・オペラ」(新国立劇場情報センター)ほか。バレエやミュージカルなどの舞台にも精通。趣味はヴィオラ演奏(最近、弾いていません。)、朝の連続ドラマ鑑賞、SNS投稿。

 

PMF2023 出演アーティスト紹介
アカデミーが憧れるファカルティ

PMFオーケストラはオーディションに合格した世界の若手音楽家で毎シーズン新しく結成されます。名前は同じでもメンバーや響きが同じPMFオーケストラはありません。
創設者のレナード・バーンスタインは知っていたのでしょう。この広い世界に同じ顔の人間がいないように、個性も価値観も違う音楽家たちが世界中から集まり、一から同じ音楽を創り上げることの面白さを。古典と呼ばれる音楽の可能性を広げることを、その情熱と感動は持続可能性になることを。そして、PMFオーケストラのメンバーであるアカデミーたちの生きる希望になることを。
バーンスタインの想いを受け継ぎ、今夏のPMFオーケストラを率いる指揮者は調整中です。決まり次第、公式ウェブサイトやSNSでお伝えします。
今回はPMFの主役、アカデミーたちが憧れるファカルティ(教授陣)をご紹介します!世界のトッププレイヤーである彼らは各楽器セクションで指導にあたるとともに、本番ではPMFオーケストラの一員として演奏します。PMF2023には26人の名手が参加予定。PMFウィーン演奏会をはじめ人気の室内楽に出演するほか、今年はボランティアコンサートなども再開できる見込みです。

ここにも宿る、バーンスタインの精神 多様性が音楽の可能性を広げ、道をひらく!PMFファカルティ(教授陣)
PMFウィーン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーで構成/PMFオーケストラ・アカデミー教授(2023)を見る
ボランティアコンサート(市立札幌病院)の様子
 
PMFベルリン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーで構成/PMFオーケストラ・アカデミー教授(2023)を見る
ボランティアコンサート(札幌市立豊成養護学校)の様子
 
PMFアメリカ/北米メジャー・オーケストラのメンバーで構成/PMFオーケストラ・アカデミー教授(2023)を見る
オーケストラ部(藤女子中学校・高等学校)訪問指導の様子
 
 
コンサート付き音楽講座 PMFクラシックLABO♪ おすすめ
 
ポスター:PMFクラシックLABO

「PMFクラシックLABO♪」はクラシックを学び、楽しむ音楽講座です。3月24日(金)にシリーズ第4弾となる「音楽を旅する フランス編」を開催します。現在、チケット好評発売中です!
今回は「香り高きフランスの響き」をテーマにドビュッシーとラヴェルの“差異”に迫ります。フランス音楽を代表する二人は、実は似て非なる作曲家でした。
ナビゲーターには“わかりやすい解説”で定評のあるクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん。フランスの上流階級で流行し、豊かな音楽文化を育んだハープの響きも気軽にお楽しみいただけます。春風を感じる金曜の夜、コンサート付き音楽講座「PMFクラシックLABO♪」にぜひご来場ください!

PMFクラシックLABO♪ Vol. 4 〜音楽を旅する フランス編〜

日時
3月24日(金) 開演 19:00 開場 18:30

会場
クリエイティブスタジオ(札幌市民交流プラザ3階)

出演 
飯田 有抄(企画監修・ナビゲーション)
見尾田 絵里子(ハープ)

写真:飯田 有抄、見尾田 絵里子
飯田さんは小樽出身、見尾田さんは函館出身の道産子(どさんこ)です。それぞれ東京藝術大学、桐朋学園大学で学びました。お二人の音楽ラボ(実験)をお楽しみに!

曲目
ドビュッシー:月の光
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
タイユフェール:ハープ・ソナタ

料金
全席指定 一般 2,000円 / U25 1,000円

 
 
バーンスタイン プレイスの四季ミニ 銀雪

バーンスタイン像は2014年7月、PMFの25回を記念して建立されました。制作者は金属工芸家の宮田亮平さん(元文化庁長官、東京藝術大学名誉教授・元学長)です。メイン会場の札幌コンサートホールKitaraを臨む中島公園内にあります。

日本橋三越(新館)エンブレムをはじめ、イルカをモチーフとしたシュプリンゲン(Springen)シリーズが代表作の宮田先生。3つのボタンにはイルカが刻まれています。
 
札幌の冬のイベント
「さっぽろ雪まつり」


3年ぶりの会場開催となった「札幌市制100周年記念 第73回さっぽろ雪まつり」は、大通会場に175万人が来場(コロナ前より増加!)。2月11日(土・祝)、大盛況のうちに閉幕しました。
バーンスタイン生誕100年を記念した大雪像とイベントの様子(2018年2月)
 
 
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