次世代に引き継ぎたい有形・無形の北海道の財産を認定する「北海道遺産」にPMFが選ばれました。
パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)は、1990年、『ウエストサイド・ストーリー』の作曲者として知られる世界的な指揮者、レナード・バーンスタイン(1918~90)が、ロンドン交響楽団とともに札幌で創設した国際教育音楽祭です。これまで約30年にわたり、世界78カ国・地域に延べ約3,800人の優秀な音楽家を輩出し、未来のクラシック音楽シーンを担う人材の育成に貢献してきました。
PMFの中心は、世界を代表する音楽家を教授陣に迎え、オーディションで選ばれた世界中から集まる若手音楽家を育成する教育プログラム「PMFアカデミー」。毎年夏の約1カ月間、出身も文化も異なる"若き才能"たちは、音楽という共通言語を通じ互いに切磋琢磨し、国際交流を深め、かけがえのない経験を胸に旅立っていきます。特に、アカデミー生により編成される「PMFオーケストラ」は、世界トップレベル・アジア随一のユースオーケストラと評され、そのみずみずしく熱のこもった演奏は、多くの人々に感動を与えています。
PMFは、音楽の力を実感する場を広げる活動にも力を入れています。小学生がオーケストラと共演しながら音楽を学ぶ「リンクアップ・コンサート」、世界最高峰の指導者が音楽大学の専攻生や中学・高校の吹奏楽・オーケストラ部を直接指導する各種セミナー、普段コンサートに足を運ぶことのできない方に直接音楽を届ける「ボランティアコンサート」など、PMFに集う多くの音楽家が地元札幌における音楽普及活動にも参加。地域に根ざした音楽祭であることもPMFの特徴です。
PMFは、タングルウッド音楽祭(アメリカ)、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭(ドイツ)とともに「世界三大教育音楽祭」のひとつとされています。これらはすべてバーンスタインにゆかりのある音楽祭であり、PMFはこれからもアジアを代表する教育音楽祭としてその役割を果たしていきます。
主催:公益財団法人パシフィック・ミュージック・フェスティバル組織委員会/札幌市
共催:公益財団法人札幌市芸術文化財団(札幌コンサートホール Kitara)
バーンスタインは、残された人生を若手音楽家の教育に捧げたいと願い、PMFの創設に尽力しましたが、その3カ月後にこの世を去りました。第2回以降の開催が危ぶまれる中、同年12月31日にニューヨークで行われたバーンスタイン追悼演奏会の席上、板垣武四札幌市長(当時)がバーンスタインの意志を引き継ぐことを宣言。以来PMFは、札幌の地で歴史を積み重ねています。
音楽祭の名称となっているパシフィック(Pacific)には、「太平洋」という意味のほか「平和」という意味もあります。音楽教育を通じて世界の平和に貢献したいというバーンスタインの願いと情熱は、このPMFに継承され、育まれています。
レナード・バーンスタイン
(1918-1990)
アメリカ出身の指揮者、作曲家、ピアニスト、音楽教育家。20 世紀を代表する指揮者であるとともに、ミュージカル『ウエストサイド・ストーリー』などの作品を残した。
PMFの根幹をなす事業は、世界最高水準のオーケストラ教育を実施する「教育部門」です。その主役である「アカデミー」は、18歳~29歳までの若手音楽家から成り、ひと夏限りのハーモニーを奏でます。PMFでは、創設当初から「オーケストラ・アカデミー」を主軸としつつ、年によっては声楽、指揮、作曲などさまざまなアカデミーを設け、音楽界の明日を担う人材育成に取り組んできました。
PMF独自のカリキュラムとして、会期前半は「PMFヨーロッパ」(ウィーン・フィル、ベルリン・フィルの奏者)、後半は「PMFアメリカ」(北米のメジャー・オーケストラの奏者)が楽器別にアカデミー生を指導するほか、世界一流の指揮者や著名なソリストとの共演もアカデミー生にとって大きな財産となります。短期間にさまざまなスタイルの演奏を体験することで視野が劇的に広がった、という声も多く、「PMFでしか得られない音楽体験」を目指し、毎年多くの音楽家がオーディションに挑みます。
経済的な負担が原因で優秀な若手音楽家がPMFへの参加をあきらめることのないよう、PMF組織委員会が世界各地から札幌までの渡航費、会期中の滞在費、一流教授陣の指導料を負担します。
PMFはいわば「ミュージックサマーキャンプ」です。約1カ月のPMF会期中、アカデミー生は短期集中型のプログラムに臨み、ひたすら音楽に専念します。毎週末に訪れるオーケストラ公演に向けた合奏を中心に、少人数で編成される室内楽のリハーサルや個人レッスンなど、実践的かつ高密度のスケジュールが組まれます。練習や公演の多くは、その優れた音響から世界有数の音楽専用ホールとも称される「札幌コンサートホール Kitara」を中心に行われます。
アカデミー生たちは、約1カ月の共同生活と、言葉や文化の壁を越え一つの音楽を作り上げるプロセスを通し、音楽への向き合い方など、音楽家として必要なことを総合的に学びます。指揮者や教授陣から受けた指導はもちろんのこと、札幌の豊かな自然や日本の文化に親しみ、同じ志を持つ仲間とふれあったPMFでの経験が、後の人生に影響を与えたという修了生の声も少なくありません。
1990年からこれまでにPMFで学んだアカデミー生(PMF修了生)の数は、世界78カ国・地域、延べ約3,800人となります。彼らは世界の200以上のオーケストラをはじめさまざまな音楽分野で活躍し、音楽や平和の素晴らしさを伝えています。
修了生の中には、世界の音楽シーンの第一線に身を置き、PMFアカデミーを指導する教授陣の一員として、再びPMFに参加している人もいます。
ダニエル・マツカワ
ファゴット
フィラデルフィア管弦楽団首席奏者
PMF1992,93,94参加
デニス・ブリアコフ
フルート
ロサンゼルス・フィルハーモニック首席奏者
PMF2003参加
アントン・リスト
クラリネット
メトロポリタン歌劇場管弦楽団首席奏者
PMF2012参加
ジョゼフ・ペレイラ
ティンパニ
ロサンゼルス・フィルハーモニック首席奏者
PMF2005参加
PMF事業のもう一つの柱である「演奏会部門」は、「教育部門」の成果を披露する場としてだけでなく、多くの皆様に良質の演奏会を提供し、音楽の素晴らしさを体感してもらうための事業です。
PMFの演奏会は、人数規模によって「オーケストラ」と「室内楽」とに分かれ、また主にアカデミー生が練習の成果を披露するものと、教授陣が出演するものとに分類されます。「PMF GALAコンサート」や「ピクニックコンサート」のように半日近くゆったりと音楽を楽しむことができるイベント的な演奏会もあり、毎年多くの方が、会期中に開催される多彩な演奏会を楽しんでいます。
文化財などホール以外の施設で行う「アウトリーチ・コンサート」は、気軽に音楽に親しむことができる演奏会です。
オーケストラや室内楽などさまざまな曲をまとめて楽しむことができる演奏会。週末の午後、お客様もドレスアップをして、上質な音楽と華やかな雰囲気に満ちたひとときを過ごすことができます。
札幌芸術の森・野外ステージで開催する名物コンサート。自由な雰囲気の中、クラシックの音色が1日中森に響き渡ります。
次世代に引き継ぎたい有形・無形の北海道の財産を認定する「北海道遺産」にPMFが選ばれました。
会期中に集う多くの音楽家が、地元札幌で音楽普及のためのさまざまな取り組みに参加しており、PMFは地域に根差した音楽祭とも言われています。
アメリカ・ニューヨークのカーネギーホールのプログラムをもとにした、小学生向けの音楽教育プログラム。映像などの演出を交えながら、子どもたちが歌やリコーダー演奏でPMFオーケストラと共演します。
教授陣が地元の中学校・高等学校の吹奏楽部などのリハーサル現場を訪問、指導します。参加者からは、普段とは違ったアドバイスが刺激になると好評です。
ユース世代がよりクラシック音楽に接しやすい環境を提供するため、一部公演において、小学生から 25 歳までの若い世代(U25)に、オーケストラを一望できる「ユース・ウイング席」を無料で提供しているほか、チケット割引を設定しています。
PMFの開催を支えているのは、音楽祭の理念にご賛同いただいた「個人」の皆様、地域の社会や文化に貢献する「企業・団体」の皆様、音楽祭を総合的に支援する「行政」の三者です。PMFは創設以来、多くの皆様の温かく力強い支えのもと、確かな成長を遂げてきました。