PMF Founded by Leonard BernsteinPMF MUSIC PARTNER 2022年9月号 vol. 92
 
PMF2022視察レポート 墓マイラー・カジポンの初めて見たPMF 初めて聴いたPMF

ウィズコロナで開催した今夏のPMF。多くの皆様のご理解・ご協力のおかげで、最後まで走りきることができました。PMFオーケストラはコロナ前と比べて編成を縮小しましたが、3年ぶりに世界の若い音楽家たちが札幌に集合する形式で実施することができ、2022年は記念すべき復活の年と言えそうです。
そこで改めてPMFの良さを読者の皆様に伝えるべく、この夏、PMFを初めて見て・聴いた、カジポン・マルコ・残月さんに、音楽祭のハイライトであるピクニックコンサートとGALAコンサートをレポートしていただきました。
カジポンさんが目と耳で感じた新鮮な視点や気持ちを伝えることで、私たちも国際教育音楽祭PMFの新たな魅力や可能性を見つけたいと思います!

第1回 初めて見たPMF
ピクニックコンサート(札幌芸術の森・野外ステージ)

2022年の夏はPMFコンサート初鑑賞とバーンスタイン像の巡礼が実現し、私にとって忘れられないものになりました。
コロナ禍が長引くなか、3年ぶりに行動制限のない夏が訪れ、7月30日の午前10時、大阪から新千歳に降り立ちました。ピクニックコンサートの会場である札幌芸術の森に到着して最初に驚いたのは、クラシックのイベントなのに、ゲート周辺に屋台(キッチンカー)が並んでいたこと。メキシコ料理のタコスやインド料理のカレー&ナンなど国際色があり、海外の若者も参加する音楽祭らしいラインナップです。シャボン玉がふわふわと飛ぶ中を子どもたちがアイスクリームやかき氷を食べ、PMFのグッズ売場もあって、あちこちに人がいっぱい。一気にお祭り感に包まれました。
ステージ前は椅子エリア、後方は斜面に原っぱが広がり、一番奥には色とりどりのテントがギッシリと並んでいました。第1部は小編成のジャズと、HBC(北海道放送)ジュニアオーケストラ。青空の下で聴く若者たちの演奏はとても気持ちの良いものでした。この日の札幌は30度を超え、演奏も気温もホット!私はタオルを頭にかけて水分をとりながらの鑑賞という、甲子園での高校野球観戦とまったく同じスタイルだったことに途中で気づき、“全然ジャンルの違うイベントなのに”と、なんだか面白かったです。
会場で見入ったのは、舞台脇の壁に掲げられた、指揮者レナード・バーンスタイン(1918-1990)のメッセージでした。そこには1990年6月26日、PMF開会式におけるバーンスタインの想いが刻まれていました。72歳で他界する4ヵ月前の言葉です。内容は、与えられた残り時間をどう使うべきか、というもの。音楽家の原点に戻る意味でベートーヴェンのピアノソナタ全曲を演奏するか、指揮者として取り組み中のブラームスの交響曲の全曲演奏を続けるか、作曲活動に専念して様々な曲を残すか、選択肢が複数ある中で、若い世代の教育に残りの人生を捧げる決断をしたとありました。バーンスタインは「知っていることすべてを若者と分かち合い、芸術と人生の関係や、自分らしくあることについて伝えたい」「だからこそPMFに身を投じるのだ」と決意を表明していました。マエストロのこのあふれんばかりの優しさと情熱!
野外コンサートの後半、私は椅子席から後方の芝生に移り、前からやってみたかった“芝生に足を投げ出してオーケストラを聴く”という贅沢な体験をしました。その解放感たるや筆舌に尽くし難いものがありました。ブラームスの雄大な調べが、周囲の森から聞こえる蝉しぐれと一緒に、北海道の青空の彼方に溶け込んでいく…自分の魂も浮遊するようでした。小さな子どもたちの笑い声などが時折聞こえ、会場は平和そのもの。私はステージ脇のバーンスタインの銘板に目をやり、その隣で若い音楽家たちが懸命に演奏している光景に感激しました。彼の魂は30年が経った今もこの地で受け継がれていたのです。

写真:レニーの言葉に胸打たれるカジポンさん/ピクニックコンサート/ピクニックコンサートの休憩時間
1.最晩年のレニーの言葉「残された時間を若い人たちに捧げたい」に胸を打たれました。/2.思い思いのスタイルで自由にクラシックを楽しめるのがピクニックコンサートの魅力/3.休憩時間。PMFの豊かな響きを堪能して幸せな私
バーンスタイン像(中島公園)

翌31日は午後から中島公園の札幌コンサートホールKitaraでPMF GALAコンサート。13時に演奏会場のKitaraを訪れると、開演の2時間半前なのに当日券を買い求める方の行列ができており、PMFオーケストラの3年ぶりのコンサートが待ち望まれたものと実感しました。私はコンサートの前に今回の視察のメインイベントのひとつである、中島公園のバーンスタイン像を巡礼。ファースト・インプレッションが重要と思い、その瞬間までレニーの姿が目に入らないよう、足下だけを見て移動しました。「着きましたよ」という声で顔を上げると、想像していたよりも巨大なレニーの像が!はわわわわわ!!少し時間をいただき、レニーのもとに駆け寄ってヒシッと土台に抱きつきました。お顔が本物のレニーにそっくり!私はニューヨークで撮影した墓石の写真を手に、「二度、お墓でお会いしています」と報告し、血圧と脈拍が少し落ち着いたところでツーショットの写真撮影をしていただきました。ついに憧れのレニー像に謁見することができ、感無量でした!

写真:中島公園のバーンスタイン像/PMF GALAコンサート/GALAコンサートのファンファーレ
4.敬愛するバーンスタイン先生。この角度が一番好きです!/5.開場前のロビー。3年ぶりの本格的なコンサートであり、この日を待ちわびていた人がたくさんいます。/6.ファンファーレ隊が登場!祝祭ムードを盛り上げます。
Tips:バーンスタイン像は、元東京芸術大学学長で文化庁長官の宮田亮平さんの手により制作されました。先生は日本橋三越新館エンブレムをはじめイルカをモチーフにした「シュプリンゲン・シリーズ」で有名な金属工芸家です。LB像はPMF2014からアカデミーが集まるKitaraを見つめています。
PMF GALAコンサートのゲネプロ&本番(Kitara)

その後、PMFのリハーサルを見学させていただくためKitaraに戻り、大ホールの扉を開けると最初に立派なパイプオルガンが目に入りました。ホール内部は木材が多用され、とても落ち着いた雰囲気。オーケストラの後方にも座席が多数あり、指揮者の表情やピアニストを近くで見たい人にいいですね。本番前の最終リハーサルを見る機会は滅多にないため、ブラームスの交響曲が組み上がっていく過程に興奮しました。弦の響きがとても良いので天井を見上げると、音響を立体的に響かせるための巨大な反射板が吊られ、角度も工夫されていました。さすが、名指揮者サイモン・ラトルをして「近代的なコンサートホールとしては世界一」と言わしめた芸術的なホールですね。
あまりにも居心地が良いので、リハが終わってからも客席に残り、ピアノをセッティングしたり舞台を整えたりする様子を見学していました。ステージ前には端から端まで赤いバラが飾られており、音楽祭をより華やかなものにしていました。開場15分前にロビーに出ると、ちょうど3人のトランペット奏者が2階から大理石の階段を降りてくるところでした。“何が始まるんだろう?”と見つめていると、高らかなファンファーレが鳴り響きました!なんて粋な演出なのでしょう。いろんなことが通常のコンサートと異なり、気持ちが高揚しました。
15時半に始まったコンサートは19時に終了。メインのブラームスの他にもプロコフィエフの楽曲で小曽根真さんのピアノ演奏に大興奮し、その夢のようなひとときについては次号でレポートします。ロビーでPMFの皆さんに、素晴らしい音楽体験のお礼と、コロナ下での開催にねぎらいの言葉を伝え、会場を後にしました。

カジポンの思い出パズル
私の本業は文芸研究家で墓マイラーです。part1

今回の北海道滞在は、墓マイラーの私にとって当地の著名人の墓所を訪れる千載一遇のチャンスでもありました。車があれば郊外にも行けるため、フェイスブックにダメ元で墓参の同行者を募ったところ、なんと札幌在住の親切なご夫婦に車を出していただけることに!しかも、集合時間が日曜の朝6時という狂気じみた日程を快諾して下さいました。可愛い白のミニクーペで中島公園を出発し、まずは札幌から千歳方面に40分ほど走った里塚霊園へ。ここには、新選組の二番隊組長かつ剣豪で知られる松前藩士・永倉新八が眠っています。丘の上に広がる緑の美しい墓地で、空が広く、吹き抜ける朝の風がとても心地良かったです。京都の治安を守るため、青い羽織を着て都を疾走した永倉は、池田屋事件で大活躍。維新後は杉村義衛と改名して剣道を教え、75歳で永眠しました。
続いて、市内へ戻って藻岩山の東本願寺墓地に眠るアイヌ民俗学者・知里真志保(ちりましほ)を墓参しました。アイヌ民族で初めて北海道大学の教授となった人物です。姉はアイヌ文化伝承者の知里幸恵であり、知里教授の墓石の背面には、姉が完成させた『アイヌ神謡集』の美しい一節、「銀のしずく 降る降るまわりに 金のしずく 降る降るまわりに」が刻まれていました。藻岩山は冬になるとスキー場になるとのこと、市内が一望できる見晴らしの良い墓所は夜景もさぞかし綺麗でしょうね。

写真:里塚霊園/知里真志保教授のお墓
7.永倉新八が眠る里塚霊園はスイスの墓地のように美しかったです。/8.アイヌ民族の言語学者・知里真志保教授のお墓は後ろに美しい神謡(ユーカラ)が刻まれています。
写真:カジポン・マルコ・残月

カジポン・マルコ・残月 Kajipon Marco Zangetsu

Instagram Facebook 公式サイト

1967年大阪府生まれ。文芸研究家にして「墓マイラー」の名付け親。ゴッホ、ベートーヴェン、チャップリンほか101ヵ国2,520人に墓参している。信念は「人間は民族や文化が違っても相違点より共通点の方がはるかに多い」。
日本経済新聞、音楽の友、月刊石材などで執筆活動を行う。最新刊は「墓マイラー・カジポンの世界音楽家巡礼記」(音楽之友社)、NHKラジオ深夜便「深夜便ぶんか部 世界偉人伝」にレギュラーゲストとして出演中。コロナ禍になってからは海外の墓参は休止に。この夏、札幌を訪れ、ずっと楽しみにしていたバーンスタイン像の巡礼を果たした。

 

「創り手の顔」が見える音楽配信
PMF2022 コンサート・ハイライト

前号で予告のとおり、10月1日からPMF2022の3公演を特別編集した映像配信がスタートします!
タイトルはPMF2022コンサート・ハイライト。その名のとおり、オープニング・コンサート、アンサンブル・セレクション、GALAコンサートの「いいとこどり」です。会場の臨場感とともに、客席ではわからなかった演奏者の表情や息づかいが“見えます”。配信だけの限定企画として出演アーティストたちの素顔が見えるインタビューも。
オンライン視聴券(500円)はチケットぴあのサイトでご購入いただけます。デジタル技術が可能にした「創り手の顔」が見える音楽配信をご堪能ください。

写真:PMF2022コンサート・ハイライトの様子

コンサートホールの臨場感と感動をふたたび!

PMF2022 コンサート・ハイライト

配信期間(販売期間)10月1日(土)から 10月31日(月)までオンライン視聴券 500円(税込)
予告動画(約6分)
PMF2022 コンサート・ハイライト
Tips:PMF GALAコンサート(第2部)は、NHK-FMラジオ「ベストオブクラシック」での全国放送も決まりました。放送日時は10月25日(火)19:30〜21:10の予定です。
 

あたたかい個人寄付は渡航費と教材費に
PMF2022 オフィシャル・サポートの御礼

個人の皆様から1口1,000円でご寄付を募るPMFオフィシャル・サポート。PMF2022も多くの方からあたたかいご支援を賜りました。心から御礼を申し上げます。この場をお借りして、今シーズンのご報告とお知らせです。

写真:コンサートの様子
ご報告

PMF2022 オフィシャル・サポート(個人寄付)
3,056,000円(3,056口)

海外から参加したアカデミー生の渡航費(国際線の航空運賃)の一部、日本人を含むアカデミー生(52人)がオーケストラと室内楽で使用した楽譜・楽器の費用全額として使わせていただきました。世界の若手音楽家で3年ぶりにPMFオーケストラを結成し、音楽教育と演奏活動を実施することができました。ご支援に深く感謝いたします。

ご寄付の使途(内訳):渡航費 2,222,943円…?+楽譜の購入・レンタル 614,257円…?+楽器レンタル 218,800円…?=???の合計 3,056,000円
お知らせ

寄付金受領証明書などの送付について

当財団は内閣府(内閣総理大臣)が証する税額控除対象法人です。PMFオフィシャル・サポートは税額控除(寄付金特別控除)の対象となります。

10月末までに「寄付金受領証明書」と「税額控除に係る証明書」を発行・送付いたします。ご寄付の額が10口(10,000円)以上の方には返礼品として非売品の長袖Tシャツも一緒にお送りさせていただきます。

長袖Tシャツイメージ

12月頃、5口(5,000円)以上の方には事業報告として公式報告書とPMFオーケストラ演奏会を収録した非売品CDをお送りします。

1,000円の大きな力!PMFの音楽教育と感動に直結するPMFオフィシャル・サポート(個人寄付)の状況/PMFオフィシャル・サポート(2013〜2022) 27,887,145円/PMF2022オフィシャル・サポート(受付終了) 3,056,000円/ご寄付は税額控除(寄付金特別控除)の対象です。今後のご寄付はPMF2023オフィシャル・サポートとしてお受けいたします。
PMFオフィシャル・サポート(個人寄付)
 

読者の皆様へ

ミュージック・パートナーのご感想をお寄せください。
ご感想はメール(musicpartner@pmf.jp)まで

イラスト:手紙とコーヒー
 
本メールはご登録いただいた方と関係者に配信しています。
●バックナンバーは https://www.pmf.or.jp/jp/mail/ をご覧ください。
●「PMFオンラインサービス」にご登録された方は https://yyk1.ka-ruku.com/pmf-s/ からログインのうえ、登録内容の変更やメールの配信停止を設定できます。
●お問い合わせ・ご意見、関係者の方で配信停止を希望される場合は musicpartner@pmf.jp までお知らせください。

公益財団法人 パシフィック・ミュージック・フェスティバル組織委員会

[Webサイト] https://www.pmf.or.jp/
〒060-0052 北海道札幌市中央区南2条東1丁目1-14 住友生命札幌中央ビル1階
TEL : 011-242-2211  FAX : 011-242-1687
(c) PACIFIC MUSIC FESTIVAL ORGANIZING COMMITTEE all rights reserved.※本メール内容の無断転載を禁じます。
PMF Facebook PMF公式ページ Twitter PMF公式ページ PMF公式 Instagram PMF公式 Instagram