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PMF Founded by Leonard BernsteinPMF MUSIC PARTNER 2018年1月号 vol. 39
 
生誕100年記念 特別連載企画 バーンスタイン音楽の旅
Trip 04 1972年 レナード・バーンスタイン 54歳 ロンドン
曲目 ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」(1972年) 演奏 レナード・バーンスタイン(指揮)ロンドン交響楽団

1918年生まれのバーンスタインの50代は、1970年代とほぼ重なる。ユースカルチャーが台頭し、ビートルズやローリング・ストーンズが世界中を席巻し、ベトナム反戦運動が巻き起こり、アメリカのTV番組『ザ・ルーツ』の影響で黒人賛美の潮流が生まれた。バーンスタインもこの時代の気分を全身で受けたかのように、クラシックとロックとミュージカルを融合させた『ミサ曲』を1971年に書いている。ジャンルの境界が決壊したようなこのカオス的な作品は、当時のバーンスタインの心境と、「対立ではなく融合を!」という政治的な意思を反映しているようだ。
指揮者としては、11年間、音楽監督を務めたニューヨーク・フィルを1969年に辞任し、70年のバーンスタインはフリーランスとしてヨーロッパ中の一流オーケストラに客演する。ニューヨーク・フィル辞任の理由は、作曲に集中するためであったが、指揮者にとって50歳代は最も実り多い時代でもある。時系列で見ても、バーンスタインの70年代は傑出した録音が多く、何かから解き放たれたような自由さも感じる。年代的にも、バーンスタインの名前を聞いて、個人的に脳裏に浮かぶのはこの頃のポートレイトなのだ。ハリウッド・スターのようだった青年期から「ダンシング・サンタ」のように巨大化していく晩年期まで、さまざまな姿を見せてくれた巨匠だが(指揮もルックスと比例してどんどん重厚かつ深遠になっていく)、レニーといえば、この時代の白髪交じりのハンサムな50代の紳士を咄嗟に思い浮かべてしまう。
1972年、54歳のとき録音されたロンドン交響楽団との『春の祭典』は、知力・体力ともに絶頂期であるバーンスタインの貴重な時代の記録で、ロンドン響は知性と表裏一体の獰猛なワイルドネスを爆発させている。バーンスタインがストラヴィンスキーをいかに重要な作曲家として認識していたかは、この翌年(73年)に母校ハーバード大学で行われた連続講義『答えのない問い』で詳らかにされている。ロマン派の終点を象徴するワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』で息の根を止められたクラシック音楽が、自身の死を経て、どのように再び生命を取り戻していったかが語られるのだが、バーンスタインは説得力のある語り口でストラヴィンスキーの離れ業を紹介する。
古代の英知と未来のモダニズムを融合させ、メロディーの復権を実現させた。ストラヴィンスキーは孤独なヒロイズムを選んだシェーンベルクと対蹠的な「生還者」であった。音楽と同様、実存の危機に瀕しても「生きること」の重要性を、バーンスタインはストラヴィンスキーを通じて表現する。彼はハーバードの講義で「大量殺戮兵器によって、どんどん悪くなっていく世界」を憂いていたが、40数年後の2018年はもっと深刻だ。72年のロンドンの街に溢れていたはずの、グラム・ロック・ファッションに身を包んだ若者たちの姿を思い浮かべながら、バーンスタインが何を考えていたかを想像する。「生きることの困難は必ず乗り越えられる」という声が、ストラヴィンスキーの名演から聞こえてくるのだ。

小田島 久恵 Hisae Odashima
音楽・舞踊ライター。岩手県盛岡市生まれ。岩手大学特設美術家を卒業後、出版社『ロッキング・オン』で編集者として働く。2年勤務したのちフリー、ロックのライターを続けながら、子供時代から好きだったクラシックの仕事も2000年頃からスタート。ここ数年は、年間約300のコンサート、リサイタル、オペラを取材する。著作に『クラ女のショパン』(河出書房新社・共著)『オペラティック!』(フィルムアート社)など。
Twitter:@hisae_classical
クロワッサン

クロワッサン(1月25日発売号)に小田島久恵さんによるバーンスタイン関連記事が掲載。コメントは“音楽の旅”の 山田治生さんです。PMFも登場します!

クロワッサン(マガジンハウス)
Leonard Bernstein at 100
 

冬は夏に憧れる。
バーンスタイン大雪像で夏を先取り!
〜さっぽろ雪まつりイベント情報〜

雪と氷の祭典「第69回 さっぽろ雪まつり」の開幕まで11日。先月号でお知らせしたとおり、大通公園西5丁目(東側)にバーンスタイン大雪像が登場します。
初日の2月5日(月)14時からは雪像前のステージでPMF2018概要発表イベント “Happy 100th Birthday, Lenny!” を開催。期間中は毎日、雪像に映像を投影した幻想的な世界の中で、音楽家たちがパフォーマンスするアートステージイベントを行うほか、週末にはクイズ大会もあります。
寒さが厳しい北国の2月。だからこそ、青空と深緑の夏に憧れます。バーンスタインの大雪像とステージイベントでPMFの夏を先取りしましょう!

バーンスタイン大雪像とステージイベントのイメージ

第69回 さっぽろ雪まつり
2月5日(月)〜 2月12日(月祝)

イベント情報(詳細)は公式ウェブサイトの特設ページでチェック!
※2月5日(月)はYouTube Liveで配信します。

「さっぽろ雪まつり」にバーンスタイン大雪像が登場!
 

【予告】クラシック音楽を未来につなげる
「ユース・ウイング」
〜U25(若い世代の聴衆)の開拓〜

何世紀もの長い歴史を持ち、世界中で愛されているクラシック音楽。次代を担う若手音楽家の育成とともに、その音楽と感動を分かちあう、若い世代の聴衆を開拓することを目的として、今シーズンから「ユース・ウイング」という新しい取り組みを始めます。
内容は、札幌コンサートホールKitaraで開催する有料オーケストラ公演の3階席(左右ブロック)の一部をU25の聴衆(1993(平成5)年以降に生まれた方)に無料開放。同伴者(年齢不問・1名様まで)のお席も無料で提供します。

お申込み方法などの詳細は、PMF2018フレンズ入会案内パンフレット(2月中旬)や公式ウェブサイトでお知らせする予定です。クラシック音楽を未来につなげる翼になってみませんか。

ユース・ウイング Y席(166席)
 

バックナンバーを公開
〜創刊からの軌跡をたどるページ〜

“情報の定期便”として、2014年11月に創刊したミュージック・パートナー(月刊メール)。公式ウェブサイトにバックナンバー(2017年9月号〜12月号)を公開しました。
おかげさまで来月には40号に到達の予定です。これからも読者の皆様に、さまざまな切り口で音楽祭の魅力や最新情報をお届けして参ります。どうぞお楽しみに!

PMF MUSIC PARTNER バックナンバー(2017年9月号〜12月号)
PMF MUSIC PARTNER(バックナンバー)
 
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